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東京地方裁判所 平成9年(レ)149号 判決 1997年11月10日

控訴人

小玉義昭

被控訴人

日本電信電話株式会社

右代表者代表取締役

宮津純一郎

右代理人支配人

宇田好文

右訴訟代理人弁護士

水沼宏

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、控訴人に対し、一万四四五八円及び内一万二五五〇円に対する平成六年三月一日から、内一九〇八円に対する平成七年三月一日から各支払済みまでいずれも年六分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  控訴人は、昭和三九年六月一八日、日本電信電話公社との間で、加入電話契約を締結した。

2  被控訴人は、昭和六〇年四月一日、日本電信電話公社の権利義務を承継した。

3  控訴人は、平成六、七年当時、被控訴人との間の加入電話契約に基づき、控訴人の肩書住所地に加入電話を設置していた。

4  被控訴人が加入電話契約者に対して提供すべき電話サービスの内容は、被控訴人が郵政大臣の認可を受けて定めた電話サービス契約約款によるところ、右約款には次の規定がある。

(一) 一四三条「当社は、電話帳の種類ごとに、当社が別に定める掲載地域別に電話帳を分冊し、当社が別に定める周期により発行します。」

(二) 一四四条「当社は、加入電話……について、その電話番号が掲載される地域の電話帳を一の契約ごとに、一部配布します。」

5  被控訴人は、電話サービス契約約款の右規定に基づき、東京都の区部の加入電話契約者に対し、被控訴人が東京都の各区ごとに発行する五〇音別電話帳二三冊の全部を配付すべき義務を負う。

6  被控訴人は、控訴人に対し、次の(一)記載の電話帳を配付せず、(二)記載の電話帳の配付を二か月遅滞した。

(一) 平成六年三月発行の東京都二三区分(二三冊)の五〇音別電話帳のうち、文京区分を除く二二冊(各定価の合計額一万二五五〇円)

(二) 平成七年三月発行の東京都二三区分(二三冊)の五〇音別電話帳のうち、文京区分を除く二二冊(各定価の合計額一万一四五〇円)

7  控訴人は、被控訴人の右債務不履行により、次の損害を被った。

(一) 右6の(一)記載の電話帳の未配付については、右電話帳の定価相当額である一万二五五〇円及びこれに対する右電話帳を配付すべき時期である平成六年三月一日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金

(二) 同(二)記載の電話帳の二か月の配付遅滞については、右電話帳の定価相当額に一二分の二を乗じた一九〇八円及びこれに対する右電話帳を配付すべき時期である平成七年三月一日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金

8  よって、控訴人は、被控訴人に対し、債務不履行による損害賠償請求として、前記損害の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1ないし4は認める。

2  同5のうち、被控訴人が東京都の区部の加入電話契約者に対し、その電話番号が掲載される区分の電話帳についてのみ配付義務を負うことは認め、その他の区分の電話帳の配付義務を負うことは否認する。

3  同6は認める。

4  同7は知らない。

三  被告の主張(代替物の配付による損害の不発生)

1  被控訴人は、控訴人に対し、平成六年三月発行の五〇音別電話帳の全区版(五冊)を発行後まもなく配布し、平成七年三月発行の五〇音別電話帳の全区版(五冊)を平成七年二月二日に配布した。

2  右電話帳は、請求原因6の(一)及び(二)記載の電話帳を代替するものであるから、控訴人は、実質的に損害を受けていない。

四  被告の主張に対する認否

被告の主張のうち、1は否認し、2は争う。

第三  証拠

<原審訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。>

理由

一  請求原因1ないし4の各事実は、当事者間に争いがない。

二  請求原因5(電話帳配付義務の範囲)について

1  証拠(乙一)によれば、電話サービス契約約款一三九条に「当社が発行する電話帳には、次の種類があります。(1) 五〇音別電話帳(ハローページ)、(2) 職業別電話帳(タウンページ)」との規定があることが認められる。

そうすると、同約款一四三条の「当社は、電話帳の種類ごとに、当社が別に定める掲載地域別に電話帳を分冊し、当社が別に定める周期により発行します。」との規定は、被控訴人が、五〇音別電話帳及び職業別電話帳のそれぞれについて、掲載地域を定めた上で、その掲載地域ごとに電話帳を分冊し、被控訴人が定める周期により発行すべき旨を定めたものと解される。

また、同約款一四四条の「当社は、加入電話……について、その電話番号が掲載される地域の電話帳を一の契約ごとに、一部配布します。」との規定は、被控訴人が加入電話契約者に対し、五〇音別電話帳及び職業別電話帳のそれぞれについて、同約款一四三条の規定により掲載地域ごとに分冊した電話帳のうち、当該加入電話契約者の電話番号が掲載される地域の電話帳を、一の契約ごとに一部配布すべき旨を定めたものと解される。

2  ところで、同約款一四三条は、電話帳の掲載地域については、被控訴人が合理的な範囲でこれを定めることを予定しているものと解されるところ、弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、東京都の区部については、五〇音別電話帳を、その掲載地域をおおむね区単位と定めた上で、地域ごとに二三分冊として発行していることが認められる。加入電話契約者の利便及び被控訴人の負担等に鑑みると、東京都の区部について五〇音別電話帳の掲載地域をおおむね区単位と定めることは合理的なものと認めることができる。したがって、被控訴人が東京都の区部の加入電話契約者に対して配付義務を負う五〇音別電話帳は、当該加入電話契約者の電話番号が掲載される地域の電話帳一冊のみであると解される。

これを本件についてみると、控訴人が平成六、七年当時被控訴人との間の加入電話契約に基づき控訴人の肩書住所地に加入電話を設置していたことは、右一のとおり当事者間に争いがないから、被控訴人が控訴人に対して配付義務を負う五〇音別電話帳は、文京区版の電話帳一冊のみであるということになる。

三  以上によれば、被控訴人が控訴人に対し東京都二三区分全部の二三冊の五〇音別電話帳の配付義務を負うことを前提とする控訴人の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。

四  よって、控訴人の本訴請求は理由がなく、これを棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条本文、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官丸山昌一 裁判官永野圧彦 裁判官鎌野真敬)

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